「こんな場所しか用意できなかったのだけれど、何か飲みたいものがあったら言ってくれて構いませんわ」「あ、大丈夫です。」「まぁ、お茶は持ってくるわね。」ライラさんは厨房から茶葉を少しとカップを二つ持ってきた。茶葉をケトルの専用の箱に入れて、出…
あれから私は、すぐ教室に戻った。教室に入ると、カイ達が駆け寄ってきた。心配してくれてたみたい。 「無事か、マリア!?」 「逆にこれで有事なわけがないよね。ただ校長室に呼ばれただけだよ、大丈夫。」 そこで私は、ハッとした。エマさんは。 「ねぇ皆…
でも、ここで正直に言ってもいいのかな?エマちゃんは秘伝って言ってたけど...「これは、俗に云う精霊様に命令ができる魔力の籠った記号のようなものらしい。 精霊様はそれぞれの意思で魔法行使を拒否できるが、これは、なんでもできる、精霊様を強制できる…
後日、私はなぜか校長室に呼ばれた。 「あの・・・。なんで私が呼ばれたんですか?」 「実はだね・・・。」 そういい、校長先生は私の担任の先生___フラワー先生のことを横目で見た。フラワー先生は、気まずそうな顔をして黙っている。 「昨日のテストの…
「ちょ、ちょちょちょ、ヤン、速いよー!」「これ位は出来ないと...」「前!」「うわ!...ぁぶない、また落ちる所だった」「やっぱ一緒に飛ばないと駄目じゃん。」「むぅ」あれ?思ったより雷雲近くない?「ちょっと待って!」術式術式!用意したメモに〝避…
あれから何日か経った。私はエマさんのこうもりと数々の術式を組んだ。記憶の奥底に沈んでいるものが少しずつ浮かんでくるのを感じながら、筆を滑らせた。なぜかこの行為を、この術式を・・・いや、文字を懐かしく感じた。なんでかは私にはわからないし、エ…
「ほら、魔力は使えなくとも、術式を使えばいいのよ。」「術式?」「そ。かまどに火を入れるとき、薪に火をつけるでしょ?あれは原始的な術式とも言えないような代物だけど。」「効率化するってこと?」「そうそう、なーんだ、あんた物分かりが良いじゃない…
あれから数日。私たちは、なんとも穏やかな日常を過ごしていた。 「その分暇なんだけどね~・・・。」 「飛行魔法のテストで補修受けておいて、何言ってんのよ。」 「いやーね?・・・って、んん??」 今の声誰????とりあえず、周囲を見渡してみる。こ…
「ま、マモノがいる!」最初に叫んだのは窓の外をぼうっと眺めていた少女だった。「うそ、目隠しの結界を張ってたのに...やるしかないわね。」先生が車の外に出る。「先生、大丈夫?マモノ、怖いよー。」わーんと泣き出す子も多い。...でも近づいてきてるか…
________あの子が、気づき始めている。 あの子は、この世界の救世主なのに。 この世界の神様になれるのに。 私が見つけた、かわいいかわいい玩具なのに。 愛しい子なのに。 なのに。なのに・・・!どうして!? どこでしくじった?どこで間違えた?…
「ねぇ、ヤン」「スイ、なんかカイ達いなくなっちゃったね。」「取り敢えず土さんに聞いてみる...あれ、土さんが居ない?風さんなら。」スイは風を讃える歌を歌って指を指した。「あっち。」スイはそう言って地面に図を書き始めた。「ここが鬼ごっこ始めた場…
「待て待て~って、あれ?」 鬼ごっこ中、気が付いたら私達は森の中に入ってきていた。 ここは一体どこなのだろう・・・。 「みんなー、どこ~?」 辺りには、太陽に当たってキラキラと光る飴細工の木々しかない。 ・・・この飴、なんで溶けないんだろう。 …
「少々納得がいきませんがそれに関しては同感ですわ。」うわ!聞かれてた?「あんな人形を全班につけた所で行動を監視するくらいしか出来ませんし、数が多くて全てを見きれませんわ。」「ですよねー。」「それに、結構いかつく作ってありますが、所々可愛い…
「さぁみんな、ここが砂糖のお山、『グランドシュガー』よ~♪」 馬車を降りると、辺りは銀世界だった。ただ、普通の山とは違って、甘い香りが立ち込めている。 「全然寒くないね、せんせー。」 子供の一人が、担当の先生に訊く。先生はニコニコしながら答え…
そして訪れる遠足の日。「エメラが適当にキレイな花か何かを見つけてしばらくみている、ということでよろしいですわよね?...少々わざとらしく思うのですけれど。」「あってるのね!ライラ様はさっき僕の言った通りにすればいいのね!」「わ、わかりましたわ…
「よかった・・・。よかったよ・・・!」 ほんの数日しかしゃべらなかっただけなのに、なぜか涙がこぼれた。 「よかったね、マリア。」 よしよし、とスイが私を慰めてくれる。とはいえ・・・。 「このあと、どうしよっか・・・。」 「?普通に話しかければい…
あれから数日して。「マリア・ステラレイン。」次の授業の準備をしていると、何故かフルネームでライラさんに声をかけられた。「ど、どうかしたんですか?」「カイくんと接触しちゃダメって、私言ったわよね。別に、友達としてなら、話しても構わないわよ。…
<ライラ視点> さぁ、邪魔者はもういなくなった。 今こそカイくんと・・・なんて、甘いことを考えていた。 けれど、あいつ___マリア、といったかしら。 あいつと話さなくたってから、カイくんの笑う回数がかなり減った。 カイくんは、あんな奴のどこがい…
「そ、そんな...」そんなこと...カイ君は一番最初のこの町の友達なのに...「大丈夫、私がいるから。」「スイちゃん...でも、スイちゃんが私と一緒にいたら、スイちゃんまでカイと接触できないよ...」「大丈夫。私達は友達。それに、この程度で私達の絆は揺ら…
「それで・・・マリアに何の用?」 階段の踊り場の隅で、私達はライラとその取り巻きに呼び出された。 の、はずなんだけど・・・。 「いや、その・・・ね・・・・・・。」 なんというか。 「早くして・・・。カイに“嫌がらせ”で呼び出されたってチクるよ?」…
今日は春休みも明けて、新学期。いつもの三人と孤児院を兼ねている小学校に登校している途中、昨日の話をした。「ライラ・トニトルスさんって人、なんか、感じが悪いって言うか...」「お、お前ライラと会ったのか!?」カイが反応した。「う、うん。なんか、…
「じゃーね、マリアー!!」 「また明日。」 「うん、また明日ね。」 一人歩く帰り道。 ふと思っては、泡のように消えていく。 もし魔法が使えたら、どんな風になるんだろう、と。 心の中でぽつりと、小さく呟いてみる。 もちろん、その問いに答える者はいな…
翌日、いつもの公園に行った。「ようマリア。」「ねえ、なんでヤンとスイもいるの?」「いやいや、友達の一大事でしょ!」 「あんなに歌がうまいのに魔法が使えないなんて勿体無いよ。」「ってな事で、ついてきた!」ついてきたって、え?「行き先は?」取り…
「にしても、マリアはなんで魔法使えないんだろうね。 歌はものすごく上手だから、強力な魔法の一つや二つくらい使えそうだけど・・・。」 こら、ヤン!と、カイが叱ってくれる。 きっと…いや、完全に気を使ってくれているのだろう。 正直、もう慣れてしまっ…
「マリア、おはよう。」「おはよう、マリア。」ヤンとスイがやってきた。「なぁ、昨日はあれで大分遊んだし、今度は魔法ありでいかないか?」カイが思いもよらない事を言った。「ちょ、ちょっと」私はすかさず声をかけるも、「大丈夫だ、コイツらは。」そう…
「昨日は楽しかったな。」 来たときはどうなるかと思ったけど、近所の人は優しそうだし、友達もできたし。なんだか、ここに来て急に生活がよくなった気がする。 「・・・やっと、普通に生活できるのかな。」 今まで、いろんなことがあった。自分の個性を否定…
「マリア、次はご近所に挨拶周りよ。」お母さんは言う。引っ越しなんて、数えられないほどした。酷いときは週一で。どこからそんなお金が...って思うけど、 お父さんもお母さんも、私のせいで今は質素な暮らしをしているけど、すっごく歌が上手くて、酒場で…
新しく来たところは、とても平凡で、けれどどこか楽し気な雰囲気のある町だった。 「ここが“ヴィレーヌ町”ね。」 「な!いいところだろ!!」 お父さんとお母さんが、楽しそうに話す。 (引っ越したのは私のせいなのに・・・。) 今は、二人の優しさが逆に辛…
「おーい、マリアー!」父さんが呼んでいる...父さん?「ここにいたのね、マリア。昔から勝手に歩き回るんだから。」母さんに言われた...母さん?私って誰?今の私は何歳なの?答えは先程の湖を覗き込む前に自分の中から出てきた。マリア・ステラレイン。8歳…
「いててて・・・。」 目が覚めると、そこは森の中だった。・・・・・・ん? 「なぜ森に・・・。」 さっきまで私は、交通事故で死んだはずで。 するともちろん、今意識があるのもおかしいはずで。 というか、さっきまで森の中にいたのに、なんで今私森の中に…