Wish Upon a Star“星に願いを„第九話【紅水仙】
「じゃーね、マリアー!!」
「また明日。」
「うん、また明日ね。」
一人歩く帰り道。
ふと思っては、泡のように消えていく。
もし魔法が使えたら、どんな風になるんだろう、と。
心の中でぽつりと、小さく呟いてみる。
もちろん、その問いに答える者はいない。
そう、思っていた。
「あらあら・・・あなた、魔法使えないのですね。」
「・・・どなたですか。」
物陰から、派手なドレスを着た女の子が現れた。
刺々しい口調とは裏腹に、女の子は笑っていた。
「私は、ライラ。ライラ・トニトルスですわ。
私も、この町の住人でしてよ。
ほら、大きな酒場があったでしょう。
あの店主の娘ですわ。」
「あぁ、あの。」
ライラは、にっこりと笑っているが、その眼の奥は憎悪が詰まっているように見える。そしてその笑顔も、ニヤニヤとして薄気味悪い。
「薄気味悪いとは失礼でございますね。」
「え・・・。」
私、何も言ってない。
なのに、どうして・・・。
「どうしてもなにも・・・。
私は、相手の心を読む魔法を使っただけですわ。」
「え!?」
そんなものが・・・。
聞いたことも見たこともない魔法に、少したじろいでしまう。
「にしてもあなた、どうやったらそんなにボロボロの服が着れるのですか。
私だったら、恥ずかしくて外も歩けないですわ・・・。」
「そ、それは・・・。」
私が着ている服は、遊んだ時にできた泥汚れと、
昔村八分の時に作られた穴とツギハギでいっぱいだった。
でも正直、そこまで気にしたことがない。
両親の優しさや、新しくできた友達との楽しい思い出と思えば、
どうってことなかったのだ。
でもそうか。
普通の人から見たら、これはみすぼらしい貧乏人の服なのか。
「ご心配、ありがとうございます。でも、私は大丈夫・・・」
「はぁ?何を勘違いしているかわからないけど、私はあなたが邪魔なだけですよ。
カイ君たちに近づいてほしくないから、こうして忠告してあげているだけですのよ。」
何を言っているのだろう。
「まぁいいわ。精々、新学期で苦しんでくんなまし。それでは。」
そう言って、ライラは走り去ってしまった。
え。え?結局あの子は、何がしたかったの・・・。