Wish Upon a Star“星に願いを„第五話【紅水仙】
「昨日は楽しかったな。」
来たときはどうなるかと思ったけど、近所の人は優しそうだし、友達もできたし。なんだか、ここに来て急に生活がよくなった気がする。
「・・・やっと、普通に生活できるのかな。」
今まで、いろんなことがあった。自分の個性を否定されて、村八分にされて。友達がいなくなって、近所の人との会話もなくなって、お父さんとお母さんに迷惑をかけて・・・。
「本当に・・・今までいいことなかったな。」
魔法が使えないせいで、ずっとひどい目にあってきた。
「もし・・・みんなも私を嫌いになったらどうしよう。」
カイが少し気づいてたっぽいけど・・・。どうしても、引っ越し初日には悪いことを考えてしまう。この不安が杞憂だったらいいな。そう思いながら、独り、ベットにうずくまる。
「明日が怖いな。」
どうか神様、引っ越しは今回ので最後にしてください。
*****
私が目を覚ましたのは、窓から刺す朝日のまぶしさからだった。
「んー・・・。」
眠気眼を擦り、遊びに行く支度をする。
「・・・あ。昨日の事、思い出しちゃった。」
もし、魔法が使えないことがばれたらどうしよう・・・。それにより、自然と動きも遅くなる。足がズンッと重くなり、気分も憂鬱気味。こんな状態で、楽しく遊べるかな・・・。
*****
「どうした、マリア?」
俯いた顔を、カイが不思議そうにのぞき込む。まだ朝の時間帯。なんとか約束の場所まで来たけれど、どうしても遊ぶ気持ちになれない。幸い他に誰も来ていなかったから、ベンチで座って考えていた、という感じだ。
私は、カイに全てを話すことにした。
「ふーん。」
「・・・何、その言い草は。」
「いや、別にお前が魔法を使えようと、使えなかろうと、関係ないよ。だって、マリアはマリアなんだし。気にすることないじゃん。」
意外だった。カイは、優しく私を受け止めてくれたのだ。
「あ、ありがとう・・・。」
「・・・おう。」
少し気まずい空気になりつつも、すぐに他の子たちが来た。自分は自分のままでいいんだって、思えるようになったのは、これが初めてだった。