月華【なないろレイン×花の色】

大手有名小説サイト【小説家になろう】でも人気の作家「なないろレイン」と、高校生作家が運営する【花の色】の「紅水仙」の奇跡の合作!

Wish Upon a Star〝星に願いを〟エピローグ

「君さぁ、死ぬの早いよ。」

誰?真っ暗で声しか聴こえない。

「仕方あるまい。この者は死を経験した上に記憶を保持した肉体の移動を何度も行っている。
人の身にとっても魂にとっても負荷が多大だったからに過ぎぬ。
...それにしても星界のトニトルス一族の体質は異常だ。選ばなくてはならぬな。
...私は帰る。他にも処理しなくてはならぬことが多々あるからな。
...お主は気楽で良いなぁ?雅人よ。」

ライラさんと関係が?

「そりゃあ、この全ての世界の魂を裁く世界の長ともなれば忙しいに決まってるだろ?
俺は、その辺の世界の長に過ぎないからね。」

誰???

「八界の長がその辺の世界の長である、と?」

「うちはその辺の世界より安定してるだけだろ。」

「我々の世界の一番の負担が何を言っている?」

喧嘩始まったよ...あと二人とも誰?

「はぁ...この会話何回目だよ。」

「言ってもすぐに忘れるだろうから言わぬさ。」

「こんの堕天使!」

「...ほぅ?この私を堕天使、とな?」

「お前の名前はうちの堕天使の名前と一致してるそうだろう?」

ルシファー?

「全てお主が仕組んだ事なのに良く言うわ。」

「だが堕天使の名前と一致してるのは事実!」

「...はぁ。全くお主は幼稚な奴だ。
...そこの魂はお主に任せる。お主でも出来るだろう?」

私の事かな?

「ちぇ、分かったよ。鈴音の体に入れときゃ良いんだろ?
あと、こいつの死後はお前の担当だよな?
こいつが余計なこと考えてても余計なこと言っても許してやれよ?」

...どういうこと?

「憶えていたら、な。」

「堕天使サマのような記憶力馬鹿が忘れるわけねーだろ。」

「...善処するが堕天使呼ばわりはやめていただこうか。」

「やーだね。」

「...まぁいい。私は帰る。」

すると声は遠ざかって消えていった。

「さて、負担は大きいだろうけど一回鈴音に戻そうか。」

すると視界が開けた。
...病室のようだ。

「やぁ。」

中年のサラリーマンが声をかけてきた。

「どなたですか?」

「え?もう忘れちゃった??やだなぁ、君の世界の長、星野雅人って自己紹介したじゃないか。」

「印象が...あまりにも違ったので...」

「今はその辺のサラリーマンやってるだけさ。そーいうのも楽しいじゃん?」

「...?た、楽しいんですか?」

「別に、働くのは義務じゃないし。辞めたくなったらいつでも辞められるし?だって、神だもの。」

「そ、そうでしたか...」

「とにかく、マリアは楽しかった?」

「は、はい...ただ、皆が心配です。」

「それは仕方ないさ。君は死んじゃったんだから。まぁ、不安定になるのは当たり前だからね。一回魂抜けた状態で放置されてるし。
あっちじゃまともに保護できないでしょ。
あいつはそんなに強くないはずだし。
俺は慣れてるし、ここは何かあっても無いようなものだし。」

「....」

全く分からない。

「まぁ、あんだけてこ入れされてればあいつらはしばらく生きてるんじゃないか?
星霊...民の上位種で安定した霊体...そして神の存在を知覚できる。
そして、星法...つまり魔法を使える。
星霊はしっかりとあいつらに同情した。
さらにルシファーがトニトルスの特異体質に目を付けたからな。
ルシファーは同時並行で数千無量大数は余裕で裁いてるはずだから234悪魔界の神の悪戯でもちょっとは時間かかるかもだが
...まぁ、あいつはマルチタスクに慣れてるからいけるだろ。」

「...とにかく、カイ達は生きてるんですか?」

「生きてるだろ...ああ、生きてる。
マリアが死んだって騒いでるよ、お可哀想に。
実は星霊になりすましてる俺がいるんだが
...何か伝えたいことはあるか?」

「貴方はどうしてそこまでするんですか?
神って人々に平等じゃないんですか?」

「そりゃあ、神と人間の感情に大きな差はないさ。
神は誰しも気に入ったやつにてこ入れする。
嫌な神は気に入らなかったやつをいたぶる。
ただ、神にとって、人間はすぐに大きくなる。すぐに死ぬ。
...人間の目の前を通りすぎる弾丸よりも早く。
瞬く間に。
人間よりも時間を細かく知覚できるが、そんなの関係なくて、神の寿命からすれば人間なんて瞬けばとっくに死んでる。
...俺が138億歳前後だとか思わないで。
俺はもっとずっと昔から生きてる。
ほら、その辺を吹き抜ける風とか、全部を知覚できたとしてもその一つ一つに愛着は湧かないでしょ?」

「神にも寿命があるんですか?」

「....さぁね。どんな奴かにもよる。
...生きてるものはいつか死ぬとか言うけどどうかな。分からない。
神にだって分からないことはある...未来に関しては神も知らない。
だが滅びていった...死んでいった神は数知れず。
...話を戻そう。伝えたいことは?」

伝えたいこと...

「───────って伝えてください。」

「王道突き抜けるねぇ...いいよ。伝えといて上げる。
...あれ、そろそろ寿命?まさかこんなに早く死ぬとは。
大丈夫。人間の死なんて怖いものでも痛いものでもないよ。
死ぬ直前が痛いかも怖いかもしれないけど。
マリアは悪いことなんかしてないと思うからきっと天界の長がきちんと転生...は出来ないか。君は何回も転生をした古株みたいだからね。その上今回の負荷じゃきついか。藤華の鱗はどうする?持ってく?」

「持っていきたいです。」

ベッドの横においてあった袋を手に取る。

「まあ、君が金粉に還ったら藤華の鱗は返すけどね。」

「??」

「まぁいいや。そろそろだね─────」

私は力が抜けてベッドに落ちた。

「...早かったな。まぁ予想通りか。
...では始める。終わった。」

真っ暗な所に声だけ響いている。さっきと同じ。

「君は火界送りにはならなかった。
...その鱗、持っているのだな。」

真っ暗なのにどこか淡い紫の光が...これが、鱗?
暖かい気がする。藤華さん、ありがとう。

「まぁ、雅人本体が回収しに来るだろうな。
...安らかに眠れ、永遠に。」

















〝やぁ、僕は精霊。君が一番感度高いね、だから君に伝えておくよ。〟

「せ、精霊様?」

ライラはいきなり倒れて冷たくなったマリアから視線を上げた。

〝マリア・ステラレインは死んだ。
最後に遺したのは...
みんな...幸せかな?...幸せでいてね。〟

「やはり...ですのね。」

「どうしたんだライラ?」

「マリア・ステラレインは亡くなったと。
最後に...みんな...幸せかな?幸せでいてね...と...精霊様が...」

そういってライラはその場を後にした。

瞳に涙を湛えながら。

「そんな....」

治療を受けたスイが泣き崩れた。

治療をうけたヤンは無言で俯く。
握りしめた手の甲にキラキラとした雫が落ちた。

「ばか....お前が居なきゃ幸せになんかなれないに決まってるだろ...」

涙ぐんだカイの声は虚しく響き、音が引いていくと同時に一つの星霊が、この世界から姿を消した。