Wish Upon a Star“星に願いを„第三話【紅水仙】
新しく来たところは、とても平凡で、けれどどこか楽し気な雰囲気のある町だった。
「ここが“ヴィレーヌ町”ね。」
「な!いいところだろ!!」
お父さんとお母さんが、楽しそうに話す。
(引っ越したのは私のせいなのに・・・。)
今は、二人の優しさが逆に辛い。
「どうだ、マリア。ここでの暮らしには慣れそうか?」
不意に、ふわりとした笑顔でお父さんが話しかけてくる。
「うん!大丈夫だよ、きっと。ううん、絶対楽しいよ!」
(心配かけちゃだめだ。)
不安な思いとか、腫れもの扱いされる自分への嫌悪とか、
そういうのは全部この機に隠してみよう。
・・・隠し通そう。
***
新しい家について、荷物とか、
引っ越しの道具とか、
其の他諸々とかを一気に片づけたころに、
来客が。
「こんばんは、ステラレインさん。」
「あぁ・・・領主さんでしたか。
こんな時間に、わざわざありがとうございます。」
ほらマリア、と呼ばれて、
お客さん___領主さんのことを
お父さんが紹介してくれた。
なんでも、この人は私達が村八分にあっていたときに、
ちょうど出張で来ていたらしく、
不憫に思った領主さんは
私達を陰でたくさん支えてくれていたらしい。
たとえば、自分達の畑に嫌がらせの魔物を放たれたときは、
魔物を遠くに逃がしてくれて、おまけに食料を分けてくれたり、
病気になっても近くの医者が耳を貸してくれないときは
馬車を手配してくれて、
隣町の病院に連れて行ってくれたり・・・。
軽いことから、命に関わるようなことまで、
あらゆることで助けてくれていたんだそうだ。
(優しい人だな。)
世の中には、意外といい人たちがいるようだ。