Wish Upon a Star“星に願いを„第十五話【紅水仙】
「よかった・・・。よかったよ・・・!」
ほんの数日しかしゃべらなかっただけなのに、なぜか涙がこぼれた。
「よかったね、マリア。」
よしよし、とスイが私を慰めてくれる。とはいえ・・・。
「このあと、どうしよっか・・・。」
「?普通に話しかければいいんじゃない?」
スイが小首をかしげる。ただ、そう上手くいくとは思えない。
「だって、何日かだけど、私はカイたちを無視・・・とまではいかないけど、避けていたわけでしょ。」
「でも・・・それは事情があったし・・・。」
違うよ、という代わりに、私は首を振った。
「事実、私はカイたちを傷つけちゃっている。多分今話しかけても、気まずくなるだけだと思う。」
そう言い終えると、私もスイも、押し黙ってしまった。しばらく続く沈黙。最初に切り出したのは、予想外の人物だった。
「なら、私が協力してあげるのね。」
声の方を向くと、いつぞやの木賊色の髪の子___ライラさんの取り巻きの一人___がいた。
「えっと、あなたは・・・。」
「エメラード・トレイルね。エメラって呼ばれているのね。」
独特な語尾だな、エメラちゃんって。
「で、ライラの取り巻きが何しに来たの?」
前と同じように、冷たい口調でスイが訊く。少し怯えたような表情をするエメラちゃんを見ると、なんか申し訳なくなってくるな・・・。
「ま、まぁスイ。別に悪い子じゃななさそうだし・・・危害も加えてこなそうだよ?」
「そうなのね!僕はただ、君たちのお役に立ちたいだけなのね!」
そういい、エメラちゃんはピョンピョンと飛び跳ねた。
「今度、遠足があるのね。その時に、僕がきっかけを作るから、二人はそれに合わせとほしいのね。」
「ちょいちょいちょい、話が飛躍しすぎててついていけないから待とうか!」
ということで、詳しく聞いてみたら・・・こんなようなことだった。
・来週、学年で遠足に行くことになっていること
・遠足では、教師陣の決めた班で活動するということ
・班は既に決まっていて、マリア達とカイ達、エメラ・ライラは同じ班だということ
・そこで、適当にきっかけをエメラがつくるから、二人にはそれにのってもらいたいということ
「うーん、欲しい情報がちょくちょく抜けているけど、まぁいっか。いいよね、スイ?」
「マリアがいいなら、いいよ。」
「これでOKなのね!それじゃあ、当日によろしくなのね!」
そういい、エメラちゃんは走って行ってしまった・・・。