Wish Upon a Star〝星に願いを〟第四話
「マリア、次はご近所に挨拶周りよ。」
お母さんは言う。
引っ越しなんて、数えられないほどした。
酷いときは週一で。
どこからそんなお金が...って思うけど、
お父さんもお母さんも、私のせいで今は質素な暮らしをしているけど、すっごく歌が上手くて、酒場で結構稼いでたり、オペラにも出てたり...結構裕福な暮らしをしていたからね。
「良いところだから、住む人もいい人ばっかりなんじゃないか?...どうした、マリア?」
ちょっとぼーっとしちゃってたね。
隠し通そうって決めたのに...
日が少し西に傾いて、小腹が空いてくる時間帯。
家族で近所の人と挨拶することになった。
近所のおばさんや、おじいちゃん。
いい人ばっかりだね。
「一通り家の周りの人と挨拶したし、取り敢えず今日は帰って休むか。」
そう言って、畑の先に見える家に帰ろうとしたら、男の子が声をかけてきた。
「なぁあんたたち、見ない顔だけど、どっから来たの?」
万が一前住んでた土地がバレて、歌の噂が出回ったりしたら、また引っ越さなくちゃいけないからはっきりとは言わない。
「まぁ、遠い田舎から...」
「へぇ、あんた名前は?」
男の子は私の顔を覗き込みながら聞いた。
「...マリア。マリア・ステラレイン。」
私、同年代の子供ダメなんだよ...っていうか、親しくない人間全般。
まぁ、優しそうな田舎の爺さん婆さんなら良いんだけど。
「ふぅん。俺はカイだ。カイ・コーシャ...お前、この後暇か?」
「え、う、うん。暇。」
荷物とかは精霊さんに頼んで既に配置とか終わってるし。
「今日引っ越して来たんだろ?この辺じじいとかばばあしかいねーから、年が近いやつら、紹介するよ。」
「ありがとう。」
そう言ってカイくんはすたすたと歩いていく。
「ついてこいよ。」
ちょっと小走りにカイの後を付いていった。
...後ろで両親が
「まぁ、男の子からマリアを遊びにさそうだなんて。この街に永住できるなら、カイくんとか、マリアの相手に良いかもしれないわね。」
「いやいや、今の時代、誰と結婚するかは本人たちが決めることだ...それに、俺達も恋愛結婚だろ?」
「まぁ、そうだったわね。」
と、いう話をしているとは知らずに。
「着いたぞ。」
カイがそう言うと、あまり激しくないボール遊びをしていた何人かの男女がこっちを見た。
「こいつが今日引っ越して来たやつ。」
「マリア・ステラレインです。」
「よろしくー、マリアー。」
「じゃあ順番に紹介していけよ。」
「わかった。僕はヤン・ラーセン。名前とは違って、読書とか、好きだから、勘違いしないでくれよ?」
「私はスイ、ただのスイ。孤児だったから...」
「昨日手に入れた姓を名乗れよ...」
「ヤン、この姓はまだ慣れない。だって、昨日付けられたばっかだもん...えっと、スイ・ラビット。」
孤児なのに、ウサギ?
あれ、なんで違和感あるんだろ?ってか、なんでラビットがウサギ?
頭のなかがぐるぐるする。
「あ、折角だし、このボールでも投げて遊んで行かねぇか?...今日は魔法は反則だ。だってこいつ、どうみても人前で歌うどころか、話すことも苦手だろ。」
カイに言われた。
まぁ、うん。子供にもバレちゃってたんだね。
まぁ、歌わなくても良いっていうのは好都合だけど。
そうして、日が暮れるまで、カイとヤンとスイと遊んだ。
どうやらこの町には馴染めそうです。