Wish Upon a Star“星に願いを„第二十九話【紅水仙】
あれから私は、すぐ教室に戻った。教室に入ると、カイ達が駆け寄ってきた。心配してくれてたみたい。
「無事か、マリア!?」
「逆にこれで有事なわけがないよね。ただ校長室に呼ばれただけだよ、大丈夫。」
そこで私は、ハッとした。エマさんは。
「ねぇ皆、エマさんって知ってる?」
「「「エマ?」」」
三人は声をそろえて、お互いの顔を見た。そして、首を振った。三人とも。
「え・・・他のクラスとかでも、いない?」
「僕、他クラスの人全員知ってるけど、そんな人聞いたこともないよ。」
どういうこと?まさか他学年・・・。待って私。エマさんは私の【クラスメイト】って言ってたよね。
なのに、クラスにいない。ここに、いない。つまり・・・。
「エマ・ピック・ロールは存在しない人物?」
「もう少し静かにしていてくださる?読書の邪魔ですわ。」
振り返ると、そこにライラさんが立っていた。そうだ、エマさんはライラさんの【忠実なる下僕】とも言ってた!ということは、この人に聞けば・・・。
「マリア。」
いつも涼しげな表情をしているライラさんが、今日はいつもより青ざめて見えた。
「あなたに、話さなくてはいけないことがあるようですわ。」
「おい、またマリアに何かするようならただじゃ・・・!」
「一時休戦です。」
カイにはいつも猫なで声を出していたライラさんだけど、今は冷たく言い放った。やっぱりいつものライラさんじゃない。様子がおかしい。ライラ様は、私の耳元で、こう囁いた。
「とにかく今日、私の家へ来てください。」
_エマ・ピック・ロールについて、教えてあげますわ。
最後の言葉は、カイ達に聞こえないくらい小さな声で。「また後で。」といい、ひらひらと手を振って、ライラさんは席に行った。
エマさん、あなたは一体何者なの?