Wish Upon a Star〝星に願いを〟第六話
「マリア、おはよう。」
「おはよう、マリア。」
ヤンとスイがやってきた。
「なぁ、昨日はあれで大分遊んだし、今度は魔法ありでいかないか?」
カイが思いもよらない事を言った。
「ちょ、ちょっと」
私はすかさず声をかけるも、
「大丈夫だ、コイツらは。」
そう不敵に笑った。
「風さんよー...」
「やさしい風よ、あたたかな光よ、...」
「風さん...」
カイが空高くボールを巻き上げ、ヤンが目眩ましをかけて妨害をしずらくし、ヤンが蹴ったコントロールのうまくいっていないボールを魔法でコントロールしてからスイに回す。
スイは途中で軌道を変えられるようスタンバイしている。
「えっと...えい!」
なんの捻りも入れていないボールをカイに渡す。
「なーんだ、つまんないっの!」
無詠唱で氷魔法を使い、ヤンに渡したかと思われるボールはマリアの方に向かって行った。
「か、風!」
誤魔化しを入れながら、地面の凹凸によって軌道が変わったボールをヤンに渡す。
「隠し事は、良くないよなぁ、カイ!」
「大人達にゃ、内緒だぞ!...スイもな!」
「もちろん...はい、マリア。」
流石に心の中で精霊を褒め称え、無詠唱での魔法行使をする人達には隠し通せなかったようだ。
「みんな!...」
途中でボールを無視し、泣きながら私は皆の元に行った。
「魔法だなんて、使えねえ奴もいるだろ?歌にも得意不得意がある。」
「まぁ、マリアの場合、大人達が嫌がるような使えないってんだから、曲者なんだけど...俺達が守り切ってやるさ。
...な、ヤン、スイ。」
「ちょっと、隠し事はやめて。なんでカイだけ詳しいこと知ってるの?」
「ま、早く来た奴の特権って奴だ。」
「ちょ、僕達に隠し事はないだろ!」
「別に、これから言うつもりだし...マリア、俺達だけの秘密にすっから、言ってもいいか?」
さっきのやり取りで、信頼できるっていうのはわかった。
子供にしかない思考や、物事の捉え方。
この子達は、前の町の大人達の誰よりも信頼できる。
「うん。私達だけの秘密ね。」
そう私が言うと、カイは簡潔に言った。
「実はマリア、歌はうまい癖に、魔法になると、全っ然ダメなんだ...お前らが来る前、時間あったから軽く聴かせて貰ったけど、ありゃ、前に聴いたマリアの父さん母さんよりも、ダントツでうまい。」
「う、嘘だろ?マリアの両親って前に公演にきた、国お抱えの歌手よりもうまくなかったか?」
この国は、歌が上手い者は、特別に国に仕えることがある。
万が一の時に使える魔法は、計り知れない。
そして、平常時は、旅をして、歌を歌い、民に安心させるという役目がある。
万が一のとき、これだけ歌の上手い者を、国が派遣すると。
「た、たしかに、マリアの所のお父さんとお母さんは、あの人よりも、歌うまかったけど...」
スイが言うと、確かに、お父さんもお母さんも歌が上手いなって思う。
「マリアの親に聞いたんだ。国のお抱えにはならないのかって。そしたら、マリアと一緒に居たいからって」
カイが、マリアから聞いたとき納得したんだと言う。
「その、黙っててごめん。」
「いいんだよマリア。たまーにだけど、そーゆーことを言われると、親にこっそり言ったりする奴も、いない訳じゃねーから。」
照れくさそうにカイが言う。
「も、勿論僕らは言ったりしないよ。」
少し焦ってヤンも言う。
「だって、友だち、だから。」
スイもふんわりと微笑む。
三者三様だけど、大切な友だちという事は変わらない。
「ありがとね、みんな!」
この暖かい場所にずっといたい、そう思った。