Wish Upon a Star“星に願いを„第三十九話【紅水仙】
火花。それは、圧倒的な火花だった。轟音とともに出されたそれは、私の星屑にぶち当たって、すぐに弾けていく。
「…強いっ!」
「なかなか…やる……のね…」
お互いが肩で息をする。周囲の酸素が二酸化炭素に変わっていくのがわかる。だけどまだ戦いは始まったばかり…そんななか、一人ずっと絶望したかのような顔つきの人がいた。
「エメ…ラ?なんで…そんな……魔法………ッ!」
「?何を言っているのね、ライラ。私の魔法は、どんなものも焼き付くす炎なのね。」
「ちがう!」
上ずった声で、ライラさんは叫んだ。
「あなたは、花を咲かせる魔法だったはずよ。草木を育てる魔法だったはずよ。優しいあなたらしい…みんなを笑顔にする魔法だったはずよ…!なのに…なんで……。」
「五月蠅いのね。」
感情的な声を上げるライラさんとは対に、エメラさんは冷たく言い放った。
「優しいだけじゃ、守れない。笑顔にするだけじゃ、助けられない。…そんな魔法なんて、クソくらえなのね……。」
「でも、だからってこんなことをしなくたっていいじゃない!あなたの家族だって、火事のせいで…」
「黙ってよ!!」
また、大きな火が舞い散る。
ってヤバ、防ぎきれない!このままじゃ、ライラさんの所に…。
「キャアッ!!」
「ライラさん!!!」
「さっきからなんの話してるかわかんないだが…。」
「え、嘘でしょ…。」
「嘘じゃねぇよ。」
「な、なんなの。なんなのね!?」
「なんでもないよ。ただ、王女様守ったってだけ。」
その光景は、なんとも奇妙だった。宙に浮いているカイがライラさんを抱えている。夜空に浮かぶ満月をスポットライト代わりに、優しそうに笑う彼の横顔は、まるで………
「…ええ、そうですね。」
告白直前のようだった。