Wish Upon a Star“星に願いを„第四十九話【紅水仙】
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ピッ・・・ピッ・・・・・・
細切れな音が響き渡る。あれ、ここって・・・?
「先生!月華が・・・げっかが・・・・・・!!」
聞き馴染みのある声。どこか懐かしい、そんな声。
「さかまえ・・・さん?」
かなりやつれて、しわが増えていても、優しそうな眼もとを見ればわかる。坂前さんだ。
「そうだよ!月華、大丈夫?!痛いところは?!?!」
「とくに・・・ないかな。」
嘘。本当はものすごく体中が痛い。というか私は、あのとき死んだはずじゃ・・・?
「星野鈴音さんですね。あなた、運がいいですよ。」
担当医らしき先生が語り掛ける。
「運が・・・いい?」
「ええ。実はあなたは一回死んでいます。」
?
「えっと、何をおっしゃったのか理解できなかったのですが・・・。」
「戸惑うのも無理はないです。なぜなら、こんなことは奇跡に近い、いや、確実に奇跡なのですから。」
先生が興奮したように早口でしゃべる。
「月華・・・いいえ、鈴音。あなたは事故の後すぐに死んだの。だけど、病院についたとたん、息を吹き返したのよ!」
「まぁ、それから約十六年は経っていますがね。」
・・・え?
「十六年?」
私は、この十六年間ずっと眠っていた。だけど
カイ達と過ごした日常は絶対にあって、
ライバルとの衝突もちゃんとここにあって、
優しい第二の両親に愛されていた記憶もあって、
魔法を使った感覚もあって、
手の上の愛らしい小さな精霊も夢なんかじゃなくて。
「・・・急展開すぎるよね。とりあえず、今日は私は帰るから。また明日様子見に来るね。」
そそくさと病室を出る、坂前さんと先生の背中を見送る。
空が青い。この空の向こうで、カイたちは一体どうしているんだろう。
「もう一度だけ、会いたいな。」
精霊さんと二人きりの部屋に、小さなつぶやきが広がった。