Wish Upon a Star“星に願いを„第三十五.五話「一方そのころ」【紅水仙】
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俺は、走っていた。暗く、静かな森の中を。
「スイッ!!」
息は絶え絶え、足はおぼつき、精霊たちの声がやけに遠くで聞こえている。体中どこもかしこも痛いけど、大好きなあいつのために走っていた。
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「~~~~~~ッ!!」
口枷が邪魔で、上手く声が出せない。ゆっくりと、口元から生温い液体が滴り落ちる。一滴、また一滴。自分の出す体液と、上から垂らされる水で、床には水たまりができていた。
「~~!!~~~~~~~!!!」
「おいおい、まさかこんなもので終わりなのか??」
ケッケッケと、下卑た笑い声で私を囲むのは、膝丈ぐらいまでしかない小さな小さなゴブリンたち。いつもの私だったら、こんなやつらすぐに蹴散らしている。だけど、
「ほらよ、お前の友達さんだ。もうすぐこっちに来てくれるぞ~。」
ゴブリンたちが、一斉に笑い出す。私の前に出された水晶玉の中には、汗だくになって走り回るヤンの姿が。
「こいつさ、あのトニトルスの知り合いなんだろ?手ぇ出したらやばいんじゃないか?」
「気にすんな。どうせあの金髪ドリルは、すぐに捕まえられるさ。だってあいつは・・・
一族の落ちこぼれだからな!」
「ケーッケッケッケッケwwww」
荒れ狂う雨、薄暗い洞窟の中、もうじき世界を支配する新魔王軍の基地に、今、
私はいる。