Wish Upon a Star〝星に願いを〟第三十三話
「ここは?」
闇に向かって投げた声は虚しく木霊する。
「精霊の住み処。星野鈴音さんの思う宇宙。」
男の声がする。
「ほしの、すずね?」
「ちょっとそっちの記憶を一時的に抹消したんだった...今戻すから、目を瞑って。」
何も出来ずに言われるがまま目を閉じる。
すると誰かの足音がして、
そう、本当の「私」の記憶が帰って来た。
「あれ!あの後どうなったの!?」
すると黒い服を着た人影はすっと消えた。
「私は、死んで、ここに、転生した?」
「はい。」
人影が帰った後もさっきの男の声がする。
さっきの人影とは別人?
「つまり、ここは異世界?」
「まぁ、正解です。」
魔法界とか精霊界と間違えられる、星界。
「何か後ろに哀愁が見えた気がするんですけど...」
「きっと気のせいですよ。」
「そうですか...あの、友人を捜しているので帰りたいのですが。」
「あぁ、ちょくちょく手を入れてたんだけど、たまたま世界的な位相が近くなったから連れてきたけど、説明とかしてなかったか...
君はちょっと不安定でさ。
だからちょくちょく〝お偉いさん〟に来てもらってたんだけど、君はマリアを取り込もうとしたからそれを支援して、記憶も返した。」
「よく分からないんですけど...」
「人を捜しているのなら、魔法を使うといい。」
「でも私には...」
「耳をすましてごらん。」
『わぁ、こんな人間、初めて!』
『いいやつ!』
『主さまのお気に入り!』
「今なら、出来るだろう?」
頷くと、また湖のほとりに出た。